2005年8月28日(日)午後2時開演 於:東京都庭園美術館大ホール |
| ま文 まびっく会員 藤本直樹 |
去る平成17年8月28日に、美保さんにとって以前からの念願であったコンサートが、ピアニストに曽我尚江さんを迎えて行われました。場所は、これこそ美保さんの憧れであったという、白金台にある東京都庭園美術館。ここは広大な緑地を有する国立の自然教育園に隣接し、整備された美しい庭園の中に、それと調和した昭和初期建設の旧朝香宮邸(現在は美術館として使用)が建っており、そこにいるだけでどこか優雅な気持ちにさせてくれる、都会の喧騒を忘れることの出来るオアシスとも言える場所です。その美しい庭園を窓の外に臨む大ホールにおいて、中川美保さん、曽我尚江さんというそのロケーションに見劣りしない「優雅な2人」による演奏会が開催されました。
開演を待つ方々 |
開場予定の午後1時半ごろから、庭園を散策されてきたであろう、どこか心にゆとりを持たれたように見えるお客様がホールに集まり始めました。心なしか普段のコンサートとは違った装い、客層の方が目に付いたように感じたのは筆者だけでしょうか?
そして午後2時過ぎ、いよいよ開演。オープニングはエルガー作曲の「愛の挨拶」。美保さんの音色は言うに及ばず、気品のある雰囲気を持ち合わせたまさに庭園美術館の景観にふさわしい選曲に、お客様も恐らく初めからハートをつかまれたに違いありません。
![]() 前半は白のドレスで |
2曲目は、今年の美保さんのテーマであるモーツァルトの「ソナタkv.304」。既にこれまでのコンサートでも披露された名曲ですが、ムードたっぷりの庭園美術館の空気の中、また一味もふた味も違った味わいがありました。
続く3曲目は有名なサン・サーンス作曲の「白鳥」。ここまでの3曲を聴いただけでも、いずれも一般の方にも馴染みがあり、優雅な雰囲気を味わうのにこれ以上あるのか(少し大げさですが・・・)という選曲の心憎さに、一人感動しておりました。しかし、皆様も同じ思いでお聴きになられていただろうと信じて疑いません。
続いては、フォーレの「パヴァーヌ」。この曲はどこか荘厳な響きを持った音色が印象的な曲ですが、小さなコンサート会場などで聴くのとは全く違う趣がありました。
前半の最後はポール・モーリスの「プロヴァンスの風景」。これまた美保さんお馴染みのナンバーですが、プロヴァンスという日本人にとってもどこか憧れのある地方をモチーフにした曲はやはり洋風の館で聴くと、その美しい風景が窓の外に浮かんでくるようです。ただ、それもまた美しい音色を紡ぎ出す中川美保の演奏があってのことでしょう。
休憩を挟んでの後半は、ガーシュイン作曲の「サマータイム」で始まり、次は美保さんがラジオ・FM東京のCMで演奏しているエリック・サティの「ジュ・トゥ・ヴ」。これまたしつこいようですが、庭園美術館の雰囲気にマッチした、どこかうきうきさせてくれる名曲です。幸せでかつ優しい気持ちになれた瞬間でした。
![]() 後半は鮮やかなブルーのドレスで |
そして、ここでハプニングが勃発! というのも、この日、美保さんのフランス留学時代の師であるセルジュ・ベルトーキ氏がお見えになっていて、一番前のお席で弟子である美保さんの演奏を聴かれていたのですが、急遽当日お願いをして、ちょうどご自分で持ってこられていた楽器を演奏していただくことに!その楽器というのが、おもちゃのラッパという感じがしてしまうような小さなサックスで、その名もソプラニッシモ・サクソフォン。その名のとおり、まさに他のサクソフォンでは聴くことができないであろう高音の音色が印象的でした。師が演奏された曲は、初めどこか日本の雅楽を感じさせるような音色、曲調で、会場が神秘的な雰囲気に包まれると、後半は一転、今度はどことなく中東の音楽を思わせるような非常にテンポのいいリズムで、会場のお客さんの心を一気に虜にしてしまいました。その日一番と言っても過言ではない(美保さん、ごめんなさい。)ほどの大喝采を浴びておられました。とても貴重な音楽を聴くことができ、会場に居合わせた私たちとしては非常に得をした気分でした。ちなみに、今回披露されたのは、ベルトーキ氏による即興演奏ということでした。それを後日聞いて、改めて心から拍手を送りたい気持ちでした。
![]() ベルトーキ氏の登場でステージは最高潮に |
そんな嬉しいハプニングの後、プログラムはピアソラの「タンゴ物語」。そして「オブリビオン」。このどこか郷愁を誘う名曲と美保さんの感動的な演奏に、会場の皆さんがうっとりと聴き入っている様を満足げに眺めながら、こちらも気づくと感傷的な気持ちにさせられていました。
そしてプログラムの最後はジェニンの「ヴェニスの謝肉祭のテーマによる変奏曲」。ムードある選曲で存分楽しませてもらった最後に、美保さんのテクニックがひときわ光る曲でプログラムを閉じました。
演奏後、やはり鳴り止まない心からの拍手に、アンコール曲としてお馴染みの「ヴァカンス」が披露され、観客の皆さん大満足のうちにこの日のコンサートが終了しました。
今回は、関係者の心配をよそに、当初の予定を大幅に上回る100人を超えるお客様に足を運んでいただくことができました。また、この日の休憩中、筆者が今回のコンサートに招いた知人2人と話した際、既にコンサートの半ばであるにもかかわらず、大満足の様子でした。
美保さんもコンサート後おっしゃっていたように、この庭園美術館でのコンサートを継続的に開催し、少しでも多くの方に癒しを与えることの出来る場となって欲しいと切に願います。
演奏後の美保さんとベルトーキ氏 |
演奏後のピアニスト曽我尚江さん ![]() |