中川美保ライブ見聞録22

「ヴァレンタインコンサート」より

2006年9月10日(日)午後2時開演 於:ノナカ・アンナホール
文 まびっく会員 藤本直樹 

 去る平成18年9月10日、美保さんの??回目のお誕生日を祝うバースデーコンサートがおなじみの渋谷ノナカ・アンナホールで開かれました。ピアニストには美保さんと同級生という越野景子さん。開演時間が迫り、関係者の心配をよそにお客さんの熱気に包まれた舞台に、艶やかなピンクのドレスに身を包んだ美保さんと、同じくグレーの装いの越野さんが登場すると、いざ開演です。

 この日もオープニングはここ最近美保さんのステージの幕開けを飾っているエルガーの「
愛の挨拶」。優雅な雰囲気を持つ演奏者お2人にピッタリの曲です。毎回聴くたびに「とかく大音響のイメージがあるサクソフォンから、かくも繊細な音が出るのか」と思わずにはいられません。そしてその思いは、そのまま次の曲に引き継がれました。J.Sバッハの「アリア〜バディネリ」。誰もが一度は耳にしたことのあるかの有名な旋律に、美保さんの透き通るようなサクソフォンの音色が息を吹き込み、心の琴線に触れる名演奏でした。後半は打って変わって軽快な短調の曲で、中世ヨーロッパに迷い込んだかのような幻想を抱かせてくれました。

 その後、五線譜の書かれた資料を基に美保さんによる奏法の説明が行われ、美保さんの演奏がいかに様々な技術に裏打ちされたものであるかを知ることが出来ました。その後、美保さんが説明された様々な手法が盛り込まれた「
道に迷ったトネリコ」という曲が演奏され、それまでのようにただ漫然とではなく、美保さんの指使いや演奏手法を意識して聴くことが出来、大変有意義な講義でした。


 
ピアノの越野景子さん

第1部はパリ留学時の卒業試験課題曲であるという「ソナタBWV1020」でひとまず幕を閉じ、しばしのティー(ワイン?)タイムを挟んで、ステージは豪華ラインナップの第2部へ。演奏者のお2人は、美保さんが純白のウェディング風、越野さんは薄いグリーンを基調とした花柄のドレスに、と装いも新たにステージを美しく彩ります。曲の最初は「思い出のスクリーンミュージックより」と題して、おなじみの「パリの空の下セーヌは流れる」で、ワインでほろ酔いのお客さんをさらに酔わせた後、「酒と薔薇の日々」〜「シャレード」〜「ムーンリバー」、「慕情」、「モア」と、越野さんの豪華なピアノと美保さんのムーディなサクソフォンの音色は、会場の皆さんをしばし映画が公開されたころの懐かしい時代にタイムスリップさせたことでしょう。

 そして、プログラムはさらに進み、最近美保さんが特にこだわり演奏をされている「昭和時代の名曲集」へ。最初に演奏された「
長崎の鐘」では「二度と過去のような不幸な戦争は起こしてはならない」という美保さんの心底を貫く思いが私たちにも届いたように思います。その後の「ここに幸あり」、「夜霧よ今夜もありがとう」も日本人の素朴さを思い出させてくれるまさに“名曲”を美保さんが見事な演奏で甦らせてくれました。これからも、これらの日本歌謡を代表する名曲に光を当て続けて行って欲しいと思います。


 
息のあったお二人の演奏

 最後は、美保さんが真紅の眩しいばかりの衣装に身を包み、美保さんのベストアルバムから、「オブリビオン」「さとうきび畑」と続き、ラストに「愛の讃歌」。越野さんの力強いピアノ演奏と美保さんの優雅でかつ迫力あるサクソフォンの競演で会場のボルテージは最高潮に達しました。そしてアンコールには「蘇州夜曲」が演奏され、「愛の讃歌」での興奮を冷ましてくれるような優しい音色に皆さん魅了されたことでしょう。

 バースデーのお祝いと言いながらも、プレゼントをもらったのは私たち観客の方。でもおかげで最高の「バースデープレゼント」になりました。こんな素敵なプレゼントならいつでも大歓迎ですね。これからも美保さんの更なるご活躍をお祈りしています。