2005年2月13日(日) 14:00〜 於:渋谷 ノナカ・アンナホール
ま
文・写真 まびっく会員 藤本直樹
世の中の恋人達が身を寄せ合う口実にするための神様のいたずらなのか、例年よりも底冷えのする日々が続く中、去る2月13日、中川美保さんとピアニスト有森直樹さんによる「ヴァレンタインコンサート」が催され、昨年12月のクリスマスコンサートに続き会場となったノナカ・アンナホールに、中川美保さんからの一足早いヴァレンタインデーの贈り物が届けられました。
普段は公開しない厳しい表情のリハーサル風景(中川美保さんとピアノの有森直樹さん)
有森直樹さんとの呼吸もピタリで演奏開始
この日はイギリスの作曲家、エルガーの「愛のあいさつ」がオープニングでした。気品漂う旋律の中にも、どこか愛の喜びからくる高揚感が美保さんの演奏により見事に表現され、1曲目から早くも会場にいた人々を幸せな気持ちにさせてくれました。その後、クライスラー作曲「美しきロマスリン」、ベートーヴェンの「ロマンス」と続いた後、有森直樹さんの独奏に。ショパンのピアノ曲の中でも特に人気が高いという「バラード第1番」が演奏され、華麗なテクニックと力強さを兼ね備えた有森さんの情熱的な演奏に、多くの方が胸打たれたことでしょう。
これから演奏するバッハの『バラード第1番』について語った(左)あと、華麗なテクニックで演奏する有森さん(右)
そして、第1部の締めくくりに、ジェニンの「ヴェニスの謝肉祭による変奏曲」が演奏されました。全体的に穏やかな、そしてどこかのどかな印象を受ける曲調の一方で、中川美保さんの巧みな息づかい、フィンガーテクニックが惜しみなく披露され、あらためて美保さんのサクソフォン奏者としての技術の高さを実感することが出来た一曲でした。
第2部が始まるまでの15分間の休憩時間には、会場のお客さま全員にヴァレンタインチョコレートとフランスワインが振舞われると、会場は文字通り甘い空気に包まれ、皆さまつかの間のパーティー気分を満喫されていたようです。
第2部は、エリック・サティによる「ジュ・トゥ・ヴ」で幕を開けました。会場に充満したチョコレートとワインの香りに誘われたのか、心なしか2人の演奏もそれまで以上に軽快なリズムを刻み、ワインのおかげでほろ酔いの中、その音色は皆さんの胸に心地よく響いたことでしょう。2曲目は「ジュ・トゥ・ヴ」で少し浮かれた気分を吹き飛ばすかのように、打って変わって大人のムードが漂う、ジャズナンバーの名曲「マイファニーヴァレンタイン」。どこか哀しげなピアノの調べと、繊細ながらも力強いサクソフォンの音色の競演に、男女間の愛の駆け引きのようなものを感じたのは私だけでしょうか?(演奏者の性別こそ逆ですが・・・)
そして、今回のコンサートのメインイベント「リクエストコーナー」へとプログラムは移ります。この日は、あらかじめプログラムに付された番号のくじにより、当たった方が美保さんの13曲のレパートリーの中から好きなものを選び、その曲を演奏してくれるという、ファン思いの美保さんならではの企画!!恐らく演奏者のお2人にしてみれば、内心ドキドキであったことと思いますが、そこは百戦錬磨のプロ!6名のお客様に選ばれた「明日に架ける橋」「イマジン」「さとうきび畑」「芭蕉布」「パリの空の下セーヌは流れる」「ハンガリアン舞曲No5」(順不同)というジャンルの異なる曲目を、あたかもマジシャンのように、次々とその曲想に応じた演奏で私達を魅了してくれました。曲を指名できる幸運に恵まれた方、またそうでない方にとっても、大満足の企画であったことは言うまでもありません。
“愛”をコンセプトに、情感豊かに演奏する美保さん
そして、コンサートはクライマックスへ。ラスト2曲は、美保さん自ら「中川美保のためのスペシャルアレンジ」と言うにふさわしい、洒落た大人の魅力が散りばめられたジャズナンバー「いそしぎ」、そしてフィナーレはやはりこの曲!「愛の讃歌」!この日のコンサートの盛り上がりが演奏者にそのまま乗り移ったかのような、まさに圧倒的な迫力ある演奏で、会場は大喝采のうちにヴァレンタインコンサートの幕を閉じました。
興奮冷めやらぬまま家路に向かいながら、「渋谷の街を歩くカップル達も、今日のこの演奏を聴く幸運にめぐり会えたなら、より2人の仲が深まっただろうに、そして、もっとステキなヴァレンタインイヴを過ごすことが出来たのに」と、ちょっと余計なことを考えたくなるくらい、温かい幸せな気持ちにさせてくれたコンサートでした。